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著書や自身の半生について取材に語る吉原真里さん

 親の転勤で米国に渡った小学生が、英語を懸命に学び、やがて「もう一つの母語」を得る――。「不機嫌な英語たち」(晶文社)は、吉原真里・ハワイ大学教授が自らの半生を書いた初めての小説だ。米国文化史などが専門で、これまでの作品で日本エッセイスト・クラブ賞も受賞してきた吉原さんには、小説でしか書けなかった思いがあると言う。

 ――初めての小説です。

 「もう米国生活の方が長くなりました。今まで生きてきた道筋を振り返り、米国と日本で、日本語と英語の両方で生きてきた自分の経験や思いを書いておきたかった。学問とか評論の言葉では書けないような、正論とは違う私の真実を書きたいと思って、私小説という形にしました」

 ――タイトルが印象的です。

 「担当編集者がつけてくれました。米国に渡った当初は、英語を話す場面で不機嫌だった状況が多かった記憶があります。英語をめぐる葛藤の形もいろいろあるので、『英語たち』と複数形にしてもいいでしょう。昔、放映された日本のドラマのタイトルを思い出す人もいるかもしれません。英語の題は、レイモンド・カーバーの短編集や村上春樹のエッセーのタイトルをもじって、”What I Write About When I Write (Mostly) in Japanese”としています」

 ――主人公が母親にむかって「下手な英語で話さないで」と言うなど、自身をやや「いじわる」に描いていますね。

英語本の著者に聞く

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 「サバイバルのために必死で…

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